脳神経外科ジャーナル
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脳虚血耐性現象 : 最近のトピックス(<特集>明日の脳神経外科を拓く神経科学)
北川 一夫
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2011 年 20 巻 8 号 p. 566-573

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抄録

虚血耐性現象は低体温療法と並んで,脳虚血実験系では最も確実な脳保護効果を示す現象として注目されているが,その分子機構は十分に解明されていない.当初から神経細胞をはじめとした脳細胞の遺伝子発現を介した応答が注目され,われわれは転写因子CREBの活性化が虚血耐性獲得,内在性神経細胞防御機構として重要であることを明らかにした.しかし低体温や冬眠と共通機構と考えられる代謝抑制,エンドトキシントレランスでも話題となっている遺伝子リプログラミングなどの関与も明らかになってきている.さらに虚血,低灌流に対する脳血管レベルでの適応現象として,血管新生以外に側副血行路発達(arteriogenesis)が注目されている.血管壁のずり応力の増加により血管径が拡大し側副血行として機能する現象で,血管新生に比べると分子機構の解明が遅れているが,造血因子投与による促進効果が明らかとなり,今後の研究の臨床応用が期待される.

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© 2011 日本脳神経外科コングレス
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