抄録
舌下神経鞘腫はきわめてまれな腫瘍で,舌下神経麻痺で発症することが多い.今回われわれは71歳女性の,舌下神経麻痺のない頭蓋内舌下神経鞘腫の1例を報告した.入院の2年前から,延髄右側に舌下神経管の拡大を伴う嚢胞性腫瘍を指摘されていた.腫瘍が徐々に増大してきたので,外側後頭下開頭にて,舌下神経管内への伸展部を除く頭蓋内の腫瘍が摘出された.術後舌下神経麻痺を生じることはなかった.舌下神経麻痺のない頭蓋内舌下神経鞘腫の手術では,術中にintactな舌下神経を確認し,温存することが重要である.また全摘出手術はしばしば舌下神経麻痺を生じるので,高齢の患者では意図的な部分摘出術も治療の選択肢の一つとして考慮すべきである.