脳神経外科ジャーナル
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グリオーマの疫学と標準治療(<特集>グリオーマ治療の現状と展望)
成田 善孝
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2012 年 21 巻 3 号 p. 184-191

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抄録

日本における原発性脳腫瘍の頻度は,人口10万人あた14.1人(男性11.6人,女性16.4人)と報告されており,米国の10万人あたり19.3人という数字とほぼ同じであることが2011年に初めて明らかになった.発生頻度も,(1)髄膜腫(36.8%),(2)神経膠腫(19.5%),(3)下垂体腺腫(17.8%),(4)神経鞘腫(9.9%),(6)中枢神経系悪性リンパ腫(3.6%)と,米国における頻度と同じである.グリオーマの年間の発生頻度は国内ではおよそ4,000〜5,000人程度と推定される.グリオーマは希少癌ではあるが,この40年間にグリオーマを含む悪性脳腫瘍の予後は改善したものの,依然として膠芽腫の治療成績は5年生存率が10%以下で,あらゆる癌の中でも最も予後不良である.予後が不良の原因のーつは使用できる薬剤が少ないことである.国内でのグレード2の神経膠腫に対する標準治療は手術+放射線治療で,グレード3・4の神経膠腫に対しては手術+放射線治療+テモゾロミドの投与であるが,照射の方法,照射量,化学療法プロトコールなどさまざまな治療が国内で行われている.神経膠腫の治療成績を改善するために,脳外科医はこれまでに蓄積されたエビデンスを理解して治療にあたることが必要であり,国内外で行われるさまざまな臨床試験を迅速に行うことも重要である.

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© 2012 日本脳神経外科コングレス
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