抄録
82例の慢性硬膜下血腫に対し, 術中血腫腔を洗浄するirrigation drainage (ID) 法 (n=46) と洗浄しないsimple drainage (SD) 法 (n=36) の2種類の治療を行った. 2つの治療群において術後抗血栓療法再開の有無に着目して再発率を比較した. ID法の再発率は25.9%, SD法は12.8%で, SD法で再発率は低い傾向を示したが統計学的有意差はなかった. ID法では術後2週間以内に抗凝固薬を再開した場合, 再開しない場合に比較し統計学的に有意に再発が多かった. SD法では抗凝固療法の早期再開による再発率の増加はみられなかった. SD法はID法より術後抗血栓療法の影響が少ない可能性が考えられた. 抗血栓療法中の慢性硬膜下血腫では, 服薬中断のリスクと服薬継続によるリスクをともに避ける方法としてSD法が有用な可能性がある.