抄録
症例は12歳男児で, 出血発症の左視床退形成性星細胞腫に対し手術および放射線化学療法を施行した. 周術期は脳室ドレーンを留置し, その後第三脳室底開窓術および脳室腹腔シャント術を施行した. 初回手術より5カ月後に, 頭皮下腫瘤がみられ摘出した. 病理所見は視床腫瘍と同様であり, 転移性頭皮下腫瘍と診断した. 経過中に頭蓋内転移もみられ, 9カ月の経過で死亡した. われわれが渉猟した範囲で頭皮下転移を生じた頭蓋内悪性腫瘍は28例あるが, 退形成性星細胞腫に限れば本例は2例目である. 頭皮下腫瘍は留置されていたドレーンの皮下経路にあり, 腫瘍容積倍加時間より逆算すると, 挿入時に径0.1mmの腫瘍細胞塊が同部に移植されたと推定される.