抄録
脳動静脈奇形 (AVM) はきわめて多様性に富む病変であり, 本邦では, 開頭手術・血管内治療・放射線治療のそれぞれの長所短所を活かした集学的治療が広く実践されている. なかでも, 血管内治療による塞栓術は, 非接着性液体塞栓物質Onyxが認可された後, きわめて重要な役割を果たしている. 単独でも塞栓術の根治性は大きく向上したが, 特筆すべきは, 開頭摘出術中の出血コントロールがきわめて容易になることである. 一方で, n-Butyl-cyanoacrylate (NBCA) は自由な濃度調整が最大の利点であり, Onyxが苦手とする高流量流入動脈の塞栓や標的塞栓術の中心的役割を今なお担っている. また, 開頭摘出術の優れた根治性と定位放射線治療の低侵襲性は塞栓術では実現が難しく, 集学的治療において重要な役割を果たしている. 本稿では, 本邦におけるAVM治療の現況とARUBA研究結果を比較検証し, 今後のAVM治療のあるべき姿を考察する.