抄録
小児の血管性腫瘍の多くは自然消褪するが, まれに高拍出性心不全や消耗性凝固障害を合併する転帰不良例が存在する.
症例は新生男児で生下時より左前頚部に長径約8cmの血管腫を認め, 血小板減少, 凝固異常を呈し, Kasabach-Merritt現象と診断した. 薬剤治療, 放射線治療を開始したが, 高拍出性心不全が重症化して持続透析を必要とするようになった. 日齢5に経動脈的塞栓術を施行した. 術後, 心不全および血小板数, 凝固能は速やかに改善した.
Kasabach-Merritt現象と重症心不全を伴った新生児血管腫に対する経動脈的塞栓術は有効であった. 新生児期の血管内治療には特有の注意が必要であるが, 内科的治療で改善が認められない場合に塞栓術は有効と思われた.