2018 年 27 巻 1 号 p. 9-16
わが国の高齢者人口比率 (全人口における65歳以上の割合) は, 現在26%であり, 国民4人に1人が65歳以上である. 2025年には33%, 2060年には40%に増加すると推計されている. 高齢者人口の増加に伴い, 高齢者頭部外傷も急激に増加している. 高齢者の受傷原因は, 転倒・転落が多く, 加齢に伴う身体能力の低下がその原因と考えられる. 高齢者における重症頭部外傷は, 転帰不良率や死亡率が高く, 転帰良好率が有意に低い. これは, 高齢者の脳組織の解剖学的・生理学的脆弱性に原因があると考えられ, また抗凝固薬や抗血小板薬の内服も転帰不良の原因として報告されている. 高齢者の解剖学的, 生理学的変化は年齢依存性であることに間違いない. 今後個人差を示す指標を基にした研究, 治療法の確立, 予防への取り組みが, 急速な高齢化社会が進むわが国において重要な課題である.