2018 年 27 巻 10 号 p. 736-743
グリオーマの主要な悪性形質として, 顕著な浸潤能が挙げられる. グリオーマ診断時には腫瘍細胞はすでに遠隔部に到達しているため, グリオーマの全摘出は不可能である. 近年, グリオーマの浸潤研究が多角的アプローチから進み, 知見が集積している. 特に細胞外微小環境研究の発展が目覚ましい. 環境因子としては, 局所の低酸素が細胞遊走のトリガーになると考えられる. 細胞因子としては, マイクログリアやグリオーマ細胞同士の相互作用が浸潤を積極的に助長している. また, 種々の治療がグリオーマ細胞を浸潤しやすい微小環境に変化させていると考察されている. これらの知見は, 細胞外微小環境がグリオーマ浸潤の標的となりうることを示している.