2019 年 28 巻 11 号 p. 727-732
聴神経腫瘍の摘出手術において, gross-total resection (GTR) は再発予防の点で重要である. 一般的によく選択されるアプローチはretrosigmoid approachであるが, 内耳道内にアプローチする際に内耳道後壁を削る必要がある. そのためhigh jugular bulb (HJB) の症例ではHJBの損傷のリスクが高くなるが, HJBを呈する症例に対する確立されたstrategyはない. 今回われわれはanterior transpetrosal approach (ATP) を選択することによってHJB損傷のリスクを回避した. 症例は51歳男性. 主訴は左重度難聴. 最長径24mm大のKoos grade Ⅳの左聴神経腫瘍を認めた. Jugular bulbが発達した後頭蓋内に著明に張り出すHJBを認め, 先ほど述べた理由からATPで腫瘍を摘出し腫瘍を安全に全摘出することができた. ATPはHJBを呈する聴神経腫瘍摘出におけるアプローチの選択肢の1つになり得ると考えられた.