脳神経外科ジャーナル
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特集 みらいを救う脳神経外科手術—解剖に基づいた脳神経の温存—
頚静脈孔神経鞘腫における神経機能温存を目指した手術
鰐渕 昌彦
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2019 年 28 巻 7 号 p. 424-430

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抄録

 頚静脈孔神経鞘腫はまれであり, 発生頻度は頭蓋内神経鞘腫の2.9%に過ぎない. 腫瘍の主座により, 硬膜内, 側頭骨内, 頭蓋外, ダンベル型に大別されるが, 頚静脈孔内に腫瘍が存在していることが多いため, 手術をする際には硬膜外の解剖を熟知している必要がある. 手術を念頭に頚静脈孔周囲の解剖について解説し, アプローチの詳細と手術成績について述べる.

 解剖学的にはmastoid内の構造物に加え, 環椎横突起に4つの筋肉, 上頭斜筋, 下頭斜筋, 外側頭直筋, 肩甲挙筋が付着していること, 舌咽神経, 迷走神経, 副神経は, 頚静脈球の内側で屈曲しながら頭蓋外へと走行し, 腹側には内頚動脈が存在していることを理解しておく.

 頚静脈孔神経鞘腫の摘出は, transjugular approachにhigh cervical exposureを組み合わせて行っている. 硬膜内腫瘍は全摘出し脳槽部での神経圧迫を解除し, 硬膜外腫瘍は被膜内摘出に留め, 腫瘍周囲を走行する神経ならびに内頚動脈を温存している. この方法により腫瘍の発生母地となっている神経の機能を温存・改善させることは困難であるが, 腫瘍の圧迫により惹起されている症状は軽快する傾向があった.

 頚静脈孔神経鞘腫を手術するためには, 微小解剖を熟知し, 硬膜内腫瘍は被膜ごと, 硬膜外腫瘍は被膜内摘出に留めることで, 腫瘍の圧迫により出現している症状を改善することができると考えられた.

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© 2019 日本脳神経外科コングレス
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