2023 年 32 巻 11 号 p. 728-734
中枢神経系血管芽腫は, 病理組織学的にneoplastic stromal cellとabundant vascular cellで構成されるWHO grade1の良性腫瘍であり, 治療の根幹は手術による完全摘出である. 約25%がVHL病に関連して多発性に発生することや, 小脳, 脳幹, 脊髄といった重要な部位に発生すること, 豊富な異常血管網を有することなどが手術を困難にする主な要因であり, 安全に完全摘出するためには, 腫瘍の発生機序に基づいた手術到達法の選択が重要となる. 手術困難な腫瘍には, 定位放射線治療も代替療法となり得るが, 最近登場したHIF2α阻害薬の治療効果が期待される. 本稿では, 分子生物学的機序に基づいて, 多角的な視点から中枢神経系血管芽腫に対する治療戦略について概説する.