2023 年 32 巻 8 号 p. 482-487
間脳下垂体腫瘍手術に必要な微小外科解剖, 病理と手術戦略について解説する. この手術に必要な微小外科解剖で最近注目されているのが上下垂体動脈 (superior hypophyseal artery : SHA) である. これは内頚動脈硬膜輪近傍の内側部から主幹として発生し, その後分枝するものが多く, 下垂体茎側では吻合形成するため血行障害が生じにくいが, 分枝後に視神経に向かう分枝は盲端となっており, 血行障害に弱いので注意を要する.
下垂体腺腫の偽性被膜は病理学的に膠原線維やレチクリン線維によって形成される. この偽性被膜は下垂体腺腫すべてで確認できるものではない. 機能性下垂体腺腫の場合はclinical cureのためにこの偽性被膜を可能なかぎり摘出する必要があるが, 非機能性下垂体腺腫では偽性被膜を確認することが困難な場合が存在するため, 下垂体機能低下や髄液漏の危険性が高くなる.