抄録
重症頭部外傷例に対し,ブランケットを用いたmildな低体温治療を行い,良好な成績を収めた症例を報告する.症例は33歳,男性.乗用車にはねられ受傷した.来院時意識レベルはGlasgow Coma Scale 4, CTにて左急性硬膜下血腫を認めた.開頭前の頭蓋内圧は70mmHg,頸静脈酸素飽和度は36%と著明な頭蓋内圧亢進とそれに伴う脳虚血の状態であった.血腫除去術後ブランケットを用いて鼓膜温を32〜33℃に維持するmildな低体温治療を約6日間行った.その後患者は若干の感覚性失語を残す程度で,明らかな麻癖を残すことなく,日常生活を送れるまでに回復している.