重症頭部外傷39例に対して軽度低体温療法を施行し, それらの合併症, 特に循環器系合併症や呼吸器感染症について考察した.本治療法により, その結果頭蓋内圧は低下したが, 全身血圧も低下し, 脳灌流圧も低下した.総合的には内頸静脈酸素飽和度から頭蓋内循環動態をみると, 低体温治療法導入前の脳虚血状態は導入中, 導入後改善した.ただし, 全身血管抵抗や肺血管抵抗は低体温中は増加し, 白血球やCRPなどの炎症所見が悪化した.また, 75%の症例で肺炎が併発し, MRSAや縁膿菌など治療に難渋する細菌も高頻度に同定された.われわれの行った軽度低体温療法は重症頭部外傷の治療法として有用であったが, 全身合併症の発現率が高かった.