抄録
同一内頸動脈(IC)に2個の動脈瘤が接して生じた, いわゆるkissing aneurysmsの2症例について, 診断と治療上の注意点を中心に報告した.いずれもクモ膜下出血で発症し, kissing aneurysmsはIC-Pcom(後交通動脈)分岐部およびIC-Ach(前脈絡叢動脈)分岐部に相接して生じていた.脳血管撮影では, こうした動脈瘤の存在を看過しないように撮影方向, 拡大率, 立体的把握などの撮影条件を考慮し, 注意深い読影が必要である.また, 2症例ともにkissing aneurysmsの頸部でのクリッピングを行ったが, 1例でpremature ruptureをきたした.clippingによる治療では, 動脈瘤の癒着の範囲や程度を見きわめて対処することがポイントであり, 頸部の剥離とclippingによる閉塞には慎重な手術操作が要求される.