脳神経外科ジャーナル
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対側の中大脳動脈閉塞症を契機に発見された前頭蓋底部 : mixed dural-pial arteriovenous malformationの1例
金井 秀樹梅津 正成小出 和雄
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2000 年 9 巻 9 号 p. 615-620

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抄録

左中大脳動脈閉塞症をきたし, 選択的血栓溶解療法を行う過程の血管撮影で, 右側の前頭蓋底にmixed dural-pial arteriovenous malformation(AVM)が明らかになった1例を報告した.症例は, 慢性腎不全と糖尿病の既往歴を有する57歳の男性であり, 突然右半身の脱力をきたし, 言語了解不良となって発症した.発症1時間後の頭部CTでは責任病巣は描出されず, 左中大脳動脈領域の虚血を疑って血管撮影を施行した.左頸動脈撮影で左中大脳動脈M2部のlower branch起始部の閉塞が明らかになった.引き続き同閉塞部の選択的血栓溶解療法を行うことにして, これに先立って施行した右頸動脈撮影で, 右側の中硬膜動脈およびfrontoorbital arteryから血流を受け, 皮質静脈から上矢状洞へと注ぐ右前頭蓋底部のmixed dural-pial AVMが明らかになった.この後, 再び左中大脳動脈閉塞部位を選択してウロキナーゼ48万IUを動注し, 部分的再開通を得た.特に合併症やAVMからの出血もきたさず経過した.入院18日目にAVMに対して前頭開頭下で流入動脈を閉塞し, 脳表のnidusおよび拡張した異常な静脈を凝固した.術後も軽度の言語障害は残存したが, 現在脳梗塞の再発もなく社会復帰している.

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© 2000 日本脳神経外科コングレス
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