2017 年 42 巻 1 号 p. 69-73
緒言:人工膝関節全置換術後の膝関節の可動域の拡大を図るため,最大屈曲縫合法(以下最大屈曲法)を試みた.
方法:人工膝関節全置換術が予定されている患者で術前の可動域が100°以上ある者を対象として,これを封筒法にて2群に分け,前向き試験にて従来の縫合法(以下従来法)と最大屈曲法を比較した.従来法は29膝で,人工膝関節を挿入した後,駆血帯を装着したまま約60°屈曲位で関節包を縫合した.最大屈曲法は28膝で,人工膝関節を挿入した後,駆血帯を外し,止血後,最大屈曲位にて関節包を縫合した.
結果:従来法群の可動域は,手術から4週間後が123.0°,1年後が128.3°であったのに対し,最大屈曲法群では4週間後が130.4°,1年後が129.1°であった.
考察:最大屈曲法は,大腿四頭筋を伸長して縫合するので,初期には屈曲しやすくなるが,長期成績には影響しないと考えられる.
結語:最大屈曲法は,手術の1年後には従来法との差がなくなるものの,術後短期間に大きな可動域が得られるので,入院やリハビリテーションの期間を短縮できる可能性がある.