日本臨床整形外科学会雑誌
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母指種子骨骨折の治療経験
麻生 邦一
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2020 年 45 巻 1 号 p. 1-5

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抄録

緒言:稀な母指種子骨骨折の症例を経験したので報告する.

症例:46歳,女性で,転倒し右手掌を石の上に突いて受傷し,17日後に来院した.母指MP関節掌橈側に圧痛,屈曲制限をみとめた.通常の2方向X線像では骨折は不明瞭であったが,斜位像,軸方向撮影にて骨折が判明し,さらにCTにて撓側種子骨の骨折が確定した.ギプス固定,理学療法などの保存的治療を行うも疼痛が続くため,受傷後3か月半にて,小骨片を切除する手術を行い,術後症状は軽快した.

考察:受傷機転,圧痛部位より本骨折を疑うことが大事であり,診断確定にはCT検査が有用である.種子骨は掌側板内に存在するので,急性期では保存的治療が有効であるが,陳旧例,保存的治療が無効な場合には手術的に修復するか切除するのが良い.

結語:稀ではあるが,本骨折が起こりうることを念頭におき,診断を見逃さないことが大事である.

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© 2020 一般社団法人日本臨床整形外科学会
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