1996 年 9 巻 1 号 p. 89-100
柔道の主要全国大会に出場しているチームの指導者143名を対象に,①指導者の現役選手時代の状況②指導条件及び環境③指導観について調査を行った。そして,次のような結果を得た。
①指導者の現役時代と現在の指導している選手を比較すると,成績自体はほぼ同程度であるが,指導者の現役時代の方が練習は自主的で,部内の雰囲気は常に厳しい状態であった。
②柔道の指導者の周囲の環境は他の競技と比較すると,スポーツが盛んで,関心が高く,実生活への影響もほとんどの面で優遇されていた。
③選手の入部の形式は他の競技が自主的に入部する者が比較的多いのに対して,柔道は勧誘・選抜されて入部する者が多かった。
④指導者の現在と選手時代のモットーでは,選手時代は「勝利」が多く,指導者となった現在は「ベスト」「フェアー」へ重点が置かれていた。
⑤調査項目問の関連をもとにアローダイヤグラムを描いてみると,「勝利志向」「技術・品格志向」「指導環境要因」「人間関係の指導環境」の4つ関連の連鎖がみられ,それらの中では「勝利志向」が 最も指導レベルと関連が高く,「技術・品格志向」「指導環境要因」は比較的関連は低かった。