抄録
本研究は,幼児における描画構成の発達,特に対象の非標準型の構成に関わる認知的要因として,描く大きさと位置を捉えるための空間認知と標準型に対する反応の抑制に着目した.実験1では描画と認知の関連を確認するため,4歳児から6歳児を対象に描画課題,空間認知課題,標準型の抑制課題を実施した.その結果,非標準型を描いた参加児のほうが標準型を描いた参加児よりも空間認知および抑制得点が高いことが確認された.実験2では認知と描画の因果性を調べるため,実験1で標準型を描いた参加児を対象に認知の向上を促す訓練を実施した.その結果,空間認知および抑制の両得点が向上した参加児は非標準型を描くようになることが明らかとなった.以上から,空間認知と抑制の発達が描画構成の発達に寄与することが示唆された.