認知心理学研究
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最新号
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原著
  • 長谷川 凌, 川島 朋也, 篠原 一光
    2024 年 21 巻 2 号 p. 47-58
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    思考発話法とは,実験参加者に課題を行うと同時に課題遂行中の考えをすべて声に出すことを求めることである.本研究は,思考発話量の個人差とワーキングメモリ容量の関係および思考発話が課題成績に与える影響を調査した.実験では,参加者は提示された複数の漢字に共通する漢字一文字を考える遠隔連想テストを,心に浮かんだことを声に出して言いながら行った.また言語ワーキングメモリスパン課題を行い,参加者をワーキングメモリ容量高群と低群に分けた.その結果,ワーキングメモリ容量高群は課題の難易度が高くなると発話量が減少するのに対し,ワーキングメモリ容量低群は発話量が増加したことから,ワーキングメモリ容量によって課題難易度が変化した際にどのように発話するのかが異なる可能性が示唆された.また,発話によって解答時間が遅くなることが示され,発話が課題遂行を妨害する可能性があることが示唆された.

  • 松田 憲, 畔津 憲司, 齋藤 朗宏, 有賀 敦紀
    2024 年 21 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    選択のオーバーロード現象とは,過剰な商品選択肢は消費者にかえって負担になり,購買意欲を抑制してしまう現象である.Haynes (2009)は,タイムプレッシャーを明示的に与えた場合にオーバーロード現象が生起することを示したものの,その後の追試では一貫した結果が得られていない.本研究は,選択を待つ他者の存在によって焦燥感を非明示的に与えることで選択のオーバーロード現象が生起するかを検討した.56名の参加者は,10名の待機列が視界に入る状態で4枚ないし12枚の画像の中から欲しい画像の順位付けを行い,その後に全順位付けに対する満足度と後悔度の評定を行った.残りの36名の参加者は,待機列のいない状態で同様の手続きで行った.その結果,選択時に待機列があることで選択のオーバーロード現象が生起した.以上の結果は,待機列の存在によって生じた焦燥感が認知的制御を妨害して選択行動を阻害したことを示唆するものと考える.

  • 大杉 尚之, 河原 純一郎
    2024 年 21 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    頷きや首振り動作は,相手に同意や否定の意思を伝えるための重要なサインである.本研究の目的は,コンピューターグラフィックスで作成したモデルの頷きと首振り動作による誘導が二者択一の選択判断に及ぼす影響を明らかにすることであった.動作主の左右に配置された2つの正方形のいずれかに隠された硬貨の位置を答えるというゲーム課題を行なった.左右どちらか一方の正方形を1回クリックすると,それに応じて中央のモデルが頷きまたは首振り動作し,その後に,1回目と同じ正方形または逆側の正方形をクリックするとその位置または逆の位置に硬貨が呈示されるというものであった.実験の結果,頷き動作,首振り動作に選択判断が誘導されることが明らかとなった.また,この誘導効果は動作主属性(若い女性,中年男性,ロボット)によらず生じることが示された.頷きや首振り動作は,自分自身と観察者の間の対象への評価,判断にも影響を及ぼすと考えられる.

展望
  • 石黒 翔, 齊藤 智
    2024 年 21 巻 2 号 p. 79-99
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    ワーキングメモリは認知的活動の遂行を支える.私たちの生活における重要な認知的活動に社会的活動があり,社会的活動で用いられるワーキングメモリとして社会的ワーキングメモリが近年注目を集めている.本論文はこれまでの社会的ワーキングメモリ研究をレビューした.先行研究の知見は,社会的ワーキングメモリと(一般的な)認知的ワーキングメモリの神経科学的・行動的観点からの差異を示唆し,社会的ワーキングメモリという構成概念の重要性を示す.一方で,先行研究には多様な知見を統合的に説明する視点が欠けていることも明らかになった.また,(a)課題間の相関,(b)社会認知との関係に関する理論,(c)感情的ワーキングメモリとの同異点,(d)社会的ワーキングメモリが保持する情報の性質に関して十分検討されていないことも明らかになった.本論文は,これからの研究の方向性として,上記4つの問題に取り組むことを推奨する.これらの問題に取り組むことを通じて,社会的ワーキングメモリ概念が精緻化され,多様な知見を統合する視座を与えることが期待される.

資料
  • 細川 亜佐子, 北神 慎司
    2024 年 21 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー

    物語を読むと,読者の心内において共感的な感情が生じることがある.本研究の目的は,このような物語理解時の共感的反応の喚起プロセスにおいて,視空間的な処理の活性化が生じているのかを検討することであった.さらに,このような視空間的な処理とは,心的イメージと同様の知覚的な性質を有するのかどうかも検討することとした.具体的には,物語読解と同時に視空間記憶課題を課す二重課題を実施し,視空間記憶課題の負荷が物語読解の共感的反応を妨害するかどうかを検証した.その結果,二重課題の視空間記憶課題の課題負荷によって,物語読解課題の共感的反応得点は低下した.ただし,心的イメージ能力との関連性は示唆されなかった.したがって,本研究では,物語理解時の共感的反応に視空間的処理が関与する可能性が示唆された.

学会参加報告
優秀発表賞
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