2020 年 17 巻 2 号 p. 79-89
本研究では,リストを反復提示する場合のリスト項目に対する記銘意図がDRM(Deese–Roediger–McDermott)手続きの虚再認に及ぼす影響について検討した.実験では,2種類の学習リストから項目を一つずつペアにして提示し,その一方を記銘させ(意図学習条件),もう一方を無視するように教示した(偶発学習条件).なお,項目ペアの提示回数は1回,5回,10回で操作した.実験の結果,意図学習条件は概ねリスト項目の提示回数が増加するに伴って正再認率は増加し,虚再認率は減少するというパターンを示した.一方,偶発学習条件では提示回数が増えても虚再認率は変化せず,正再認率のみが単調に増加するというパターンが得られた.これらの結果は,リスト項目に対する記銘意図がリストの反復提示と虚再認の関係を調整する働きをもっており,ルアー項目に気づきやすい状況かそうでないかによって,虚再認のパターンが変化する可能性があることを示唆していた.