2005 年 2 巻 1 号 p. 1-8
先行研究では,空間タッピング課題が視空間的情報の保持を妨害することが報告されている.本研究は,作動記憶における視空間的情報のリハーサルシステムを明らかにすることを目的に,視空間的情報のリハーサルに対する空間タッピング課題に含まれる妨害成分の検討を行った.実験Iでは,保持時間中の空間タッピング課題に含まれる空間性注意移動がCorsiブロック課題の成績を妨害することが示された.実験IIでは,空間タッピング課題に含まれる身体運動の制御・プランニングはCorsiブロック課題を妨害しないことが示された.以上の結果から空間タッピング課題に含まれるリハーサルに対する妨害成分は,タッピングという身体運動に伴い生じる空間性注意の移動であることが示唆される.さらに,この結果を二重課題法の観点から解釈すると,注意制御システムが視空間的情報のリハーサルシステムである可能性が示唆される.