抄録
本研究では,瞬間的に変化する表情を人がどの程度正確に認知できるか,また瞬間的な表情変化に対してどのような情動的反応を示すかについて検証した.実験刺激には,途中で瞬間的に表情が変化する動画を用い,動画全般から受ける好意度の評定と,瞬間的に変化する挿入表情の分類判断を行わせた.途中の表情変化の呈示時間を530ミリ秒,330ミリ秒,200ミリ秒,130ミリ秒へと減少させたが,挿入表情が笑顔の場合に,怒りや悲しみの場合に比べて高い好意度評定値を示し,瞬間的な表情変化への情動的反応が認められた.一方,挿入表情が笑顔と怒りの場合には,200ミリ秒までは高い分類成績を示したが,変化速度が130ミリ秒に減少すると,怒りの分類成績が低下した.表情変化の時間が200ミリ秒程度あれば,表情の変化を認知できるといえるが,表情認知の容易性における3表情の差異が何に起因するかについてさらなる検討が必要である.