本研究の目的は,話し合う二人の性別の組み合せにより,目撃した出来事の記憶の再生に影響があるかどうかを検証することであった.実験は,MORI technique (Mori,2003) を用い,二人の被験者に気付かれること無く,同じスクリーンに細部が異なる二つの映像を提示して行った.被験者は48名の大学生で,男性群8組,女性群8組,混合群8組の3つの組み合せに分類した.課題は,被験者が二人一組で,それぞれ偏光サングラスをかけ,同じスクリーンに映し出された出来事を記憶し,再生することであった.映像の提示直後に,個別に何を見たのかを再生させ(直後再生),その後二人で話し合いをさせて共通の記憶再生をさせた(話し合い後再生).さらに一週間後,同じ組み合せの被験者を実験室に呼び,個別に記憶の再生をさせた(一週間後再生).結果は,女性群の話し合い後と一週間後の再生率が有意に上昇していた.男性群は,話し合い後の再生率のみ直後再生率よりも上昇した.混合群の3つの再生率には変化が見られなかった.