認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
Print ISSN : 1348-7264
ISSN-L : 1348-7264
原著
Encoding times for phonograms in English and Japanese readers: Eliminating the time for attention switching
Rika MIZUNOTakao MATSUIJason L. HARMANFrancis S. BELLEZZA
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 5 巻 2 号 p. 93-105

詳細
抄録

英語母語者と日本語母語者を対象にした我々の以前の文字マッチング実験では,日本語母語者の形態的一致のマッチングRTが短いことが確認された。そこで我々は日本語母語者の優勢文字の漢字処理における形態コードへの依存度の高さが表音文字の処理でも認められ,そのために日本語母語者の表音文字の形態的符号化の所要時間が短いという仮説を立てた。しかし,符号化以外の要因の影響でISIが短いほどマッチングRTが長くなっていたため,そのマッチングRTに基づいて符号化時間を断定することは不可能だった。我々はその要因が注意切り替えに要した時間ではないかと仮定し,英語母語者と日本語母語者を対象にアルファベットと日本語の表音文字を刺激とし第1文字の呈示時間でSOAを操作した2つの実験でマッチングRTに加えて注意切り替えの時間を知るための単純反応時間を測定した。その結果,単純反応時間はSOAが短いほど長いことが見出され,我々の仮定が正しいことが確認された。そして注意切り替えの時間を除外した正味マッチングRTからは,英語母語者では形態的符号化も音韻的符号化も 100 ms から 300 ms の間に終了するのに対し,日本語母語者の音韻的符号化の完了時間は英語母語者のそれと変わらないが形態的符号化は 100 ms 以内に終了することが明らかとなり,我々の仮説は支持的証拠を得た。

著者関連情報
© 2008 The Japanese Society for Cognitive Psychology
前の記事 次の記事
feedback
Top