抄録
本研究では,行為文理解時における空間認知について検討を行うことを目的とした.本研究では聴覚的に呈示された文の意味判断課題と視覚刺激同定課題の二つを用いた.実験参加者は,上,下,水平方向のイメージを含む行為文を聞き,直後に参加者の視野上方向ないし下方向に出現する刺激が何であるかを同定するよう求められた.刺激同定に要する時間を従属変数とし,行為文の理解が実際の行動に与える影響を調べた.研究では具体文(例:選手がバーベルを持ち上げた)と抽象文(例:生徒が先生を尊敬した)の異なる2種類の文を用いた.具体文では,行為-文一致効果が見られ,行為文の理解はその文のイメージが意味する方向に出現する刺激の同定を促進させることを示した.しかし抽象文では,刺激同定課題に対し行為文を理解したことによる影響は見られなかった.