本研究において, 長期間の高圧環境滞在時に付随する心理的要因 (社会的隔離) と物理的要因 (高圧環境曝露) と認知能力との関係について, 水深 440 m 飽和潜水訓練時のストループ干渉と 2 種類の心理的ストレス質問紙の変動によって検討した.ストループ干渉は環境圧が最大時に最も高くなった.しかし,環境圧が減少するにつれて,ストループ干渉も減少し,訓練終了時には訓練開始前の値に戻った.一方で,訓練期間中の心理的ストレスについては,高圧曝露による顕著な悪化や変動はなく,長期間の閉鎖隔離による影響もなかった.本研究を通じて,高圧環境下における認知能力を規定する要因は,高圧曝露や長期間隔離による不安や抑うつなどの心理的要因ではなく,環境圧の大きさといった物理的要因であることが示された.