2007 年 60 巻 3 号 p. 156-160
Muir-Torre症候群は, 脂腺腫瘍あるいはケラトアカントーマと内臓悪性腫瘍を併発するまれな遺伝性疾患である. 今回我々は, 3回の大腸癌切除と1回の胃癌切除の後, 55歳時に顔面のケラトアカントーマおよび前胸部に長径1cmの脂腺癌 (Sebaceous carcinoma) が併せて発生し, 本症候群と診断された症例を経験した. 消化器癌の治療経過は, 37歳時 : 回盲部, 2型, 組織学的深達度ss/右結腸切除施行, 42歳 : 横行結腸, 1型, sm/横行結腸部分切除, 52歳 : 直腸Ra, IIa+IIc型, sm/低位前方切除, 53歳 : 胃幽門前庭部, IIa+IIc, m/ハンドアシスト法腹腔鏡補助下幽門側胃切除術, である. 病理組織診にて, 大腸・胃ともに高分化腺癌でリンパ節転移を認めなかった. 家族歴では祖父に大腸癌, 父に肺癌, 叔父に胃癌を認めた. 58歳時点で無再発生存中である. 本症候群の本邦報告例を中心に集計しその特徴を考察した.