抄録
成人の前仙骨部epidermoid cystは比較的まれな疾患である. 今回, 腫瘤の大きさに合わせ経仙骨的アプローチと腹腔鏡補助下に切除した3例を報告する. 症例1 : 49歳女性で仙尾部痛にて発症. 臀部右後側の直腸外側に径5cmの嚢胞性腫瘍があり経仙骨的摘出術を施行. 症例2 : 25歳の女性で腹痛にて婦人科を受診し卵巣内出血とともに後腹膜腫瘍を指摘. 下部直腸外左後側に径9cm腫瘤の腫瘍があり経腹的 (腹腔鏡補助) 腫瘍摘出術を施行. 症例3 : 53歳女性で臀部圧迫感にて発症. 臀部正中左側仙骨前嚢胞性腫瘍の診断にて経仙骨的摘出術を施行. 3例とも腫瘍は被膜を有し周囲臓器への浸潤なく, 病理組織学的にepidermoid cystと診断. 本疾患は胎生期発生・遺残の良性腫瘍であるが, 悪性化の報告もあり, また感染が高率にみられ再燃することから低侵襲性の摘出術 (完全切除) が必要である.