日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
腹腔鏡下に手術しえた腸重積で発症した肺癌肉腫小腸転移の1例
小野里 航中村 隆俊旗手 和彦小澤 平太佐藤 武郎國場 幸均井原 厚渡邊 昌彦
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2007 年 60 巻 8 号 p. 456-461

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抄録

症例は58歳女性で, 左肺癌肉腫の診断のもと左肺全摘術を施行した. 術後1年経過して突然腹痛, 嘔吐が出現し当院内科を受診した. 腹部単純X線検査で鏡面像を認め, 腹部造影CTでtarget signが右側腹部に認められた. 腸重積の診断で入院, イレウス管で保存的治療が行われ, イレウス管造影検査では上部空腸に9cm大の透亮像が認められた. 以上より腸重積をともなう小腸腫瘍と診断され, 腹腔鏡下手術が施行された. 術中所見では, トライツ靱帯から20cmの部位に空腸―空腸型の腸重積が認められ, 整復後トライツ靱帯から34cmの空腸に径10cmの腫瘍が認められたため小腸部分切除を施行した. 切除標本上, 10×6cm大の隆起性腫瘍が認められ, 病理組織検査では, 異型の強い紡錘形細胞束の増生があり, 肺癌肉腫の肉腫成分の空腸転移と診断した.
肺癌肉腫の小腸転移はまれな疾患であり, 本邦では5例の報告があるが, 腸重積で発症した症例は2例のみであった. 腹腔鏡下手術は腸重積の診断に引き続き癒着剥離や整復などの治療も行える, したがって減圧された腸重積は本法の良い適応と考えられた.

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© 2007 日本大腸肛門病学会

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