2009 年 62 巻 1 号 p. 55-59
症例は70歳男性.直腸癌(Rb)に対して低位前方切除術を施行した.直腸癌は中分化腺癌,pA2, pN0, v3, ly1, H0, P0, M(-): stage IIであった.術後12カ月間,補助化学療法としてUFT-LV療法を施行した.術後13カ月目にふらつき·嘔気が出現した.頭部MRIで,右小脳半球に境界明瞭な約3cm大の腫瘤を認めた.全身精査で他臓器転移は認められなかった.頭蓋内病変は1カ所のみであり,孤立性脳転移と診断した.脳外科で腫瘍摘出術を施行した.脳腫瘍は組織学的には腺癌で直腸切除標本と類似し,直腸癌脳転移と診断した.ふらつきなどの神経症状は術後軽快した.脳切除後に全身化学療法としてUFT-LV療法を再開した.転移性脳腫瘍術後20カ月現在,無再発生存中である.