2009 年 62 巻 4 号 p. 250-256
肛門周囲に嚢胞様形態を呈して発生した粘液癌の2例を経験した.1例目は67歳男性.肛門左側の腫瘤を自覚して来院.骨盤CTで4×4×3cm大の嚢胞様腫瘍を認め,生検で粘液癌と診断し,直腸切断術を施行した.病理診断では直腸型肛門管癌であった.2例目は73歳男性.便秘を主訴に来院.骨盤MRIで直腸壁外右側に6×4×4cm大の嚢胞性腫瘍を認めた.悪性所見に乏しかったことから経過観察としたが,1年後に腫瘍マーカーの上昇があり,悪性腫瘍疑いで直腸切断術を施行した.病理診断は肛門腺由来粘液癌であった.肛門周囲に嚢胞様発育する悪性腫瘍の報告例は少なく,診断·治療には注意が必要である.