2010 年 63 巻 1 号 p. 37-42
症例は55歳男性で,顔面·体幹の皮膚結節の増大を主訴に当院を受診された.それぞれの皮膚結節に対して,切除術が施行され脂腺腺腫および脂腺癌の診断となった.34歳時を初回手術とする3回の大腸癌手術歴があり,内臓悪性腫瘍と脂腺系皮膚腫瘍の合併からMuir-Torre症候群(MTS)の診断となった.Microsatellite Instability(MSI)検査を行いMSI-highと診断され,遺伝子解析にてhMSH2 の胚細胞変異が認められた.免疫組織染色を加え,大腸癌および皮膚腫瘍ともにMSH2蛋白の欠失が確認できた.今回の結果より,免疫組織染色のミスマッチ修復遺伝子の大規模スクリーニングへの代用の可能性が示唆された.これまでの本邦報告例を含めて文献的考察を加え報告する.