2010 年 63 巻 8 号 p. 515-520
症例は65歳,男性.穿孔性虫垂炎で発症し虫垂切除術を施行した.病理組織検索で虫垂原発印環細胞癌,断端陽性と診断されたためリンパ節郭清をともなう右結腸切除術を追加した.虫垂断端に癌の遺残を認めるもリンパ節転移はなかった.術後化学療法にUFTを選択した.地方会で症例報告をする際の病理組織再検討で,虫垂杯細胞カルチノイドと訂正診断を受けた.虫垂杯細胞カルチノイドは,虫垂に特有で神経内分泌腫瘍の特徴に,粘液を持つ細胞群を有するまれなタイプである.印環細胞が多かったため今回のような経過となった.
文献的に考察し術後の治療の継続を決めた珍しい症例と考え報告する.