2011 年 64 巻 8 号 p. 510-515
症例は36歳男性.2009年12月に排便困難,下血を主訴に近医を受診し,精査にてS状結腸癌の診断となり当科紹介入院となった.大腸内視鏡検査でS状結腸に内視鏡通過不能な全周性の腫瘍を認め,生検で低分化腺癌と診断された.CT検査所見にて,腫瘍は骨盤内を大きく占有し,膀胱への浸潤とリンパ節の腫大を認め(cT4N2),切除困難が予想された.患者よりIC取得後,術前mFOLFOX6導入し,4コース終了後に根治術を施行した.病理組織学的所見では,原発巣は線維化のみで癌細胞はなく(grade 3),リンパ節転移,膀胱壁への浸潤も認めず,病理学的完全奏功(CR)と診断した.局所進行大腸癌に対する術前mFOLFOX6療法の妥当性は未だ確立されていないが,手術治療の根治性を高める上で有用と考えられた.