2012 年 65 巻 8 号 p. 419-425
目的:術前短期化学放射線療法を施行したT3,N0-2,M0下部直腸癌手術に対する腹腔鏡手術の短期成績を検討すること.方法:2008年1月から2010年7月までの開腹手術群(Open surgery:OS)31例と,2010年8月から2011年12月までの腹腔鏡手術群(Laparoscopic surgery:LAP)30例の2群に期間で分類し背景因子,手術因子,病理組織学的因子,術後機能および合併症について検討した.LAP群では有意に出血量が少なかったが,手術時間は長時間を要した.また,手術術式や遠位切離端の距離についても両者で有意差を認めなかった.術後機能や合併症についても両者で有意差はなかったが,腸閉塞は腹腔鏡導入初期に集中して発症しており,原因を追究,改善することで予防可能であった.結語:開腹手術での経験を生かしつつ,腹腔鏡手術の適応を段階的に広げることでNCRT施行下部直腸癌にも安全に腹腔鏡手術が導入可能であった.