2013 年 66 巻 7 号 p. 529-533
症例は81歳,女性.65歳時に卵巣癌に対し単純子宮全摘,両側付属器切除,大網切除術を施行された.今回,便潜血陽性の精査で下行結腸癌と診断され当科紹介となった.生検結果は低分化型腺癌であったが,免疫染色ではCK7(+)CK20(-)ER(+)であり卵巣癌大腸転移の可能性も念頭にいれ腹腔鏡下左結腸切除D3郭清術を施行した.切除標本は長径23×25mm大の2型腫瘍で低分化な腺癌像を呈し,卵巣腫瘍類似の漿液性嚢胞腺癌様な所見であった,各種免疫組織学的にも前回手術の卵巣腫瘍と類似しており,卵巣癌大腸転移と診断した.術後は婦人科にて化学療法を施行.術後1年9ヵ月無再発生存中である.卵巣癌大腸転移は多くが播種性転移によるものであり,壁内性転移は稀である.また,壁内転移では粘膜下腫瘍様形態を呈することが多く,本症例のような2型進行癌類似の形態を呈した異時性孤立性大腸転移は非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.