2014 年 67 巻 7 号 p. 454-459
今回,われわれは直腸癌および横行結腸癌術後に異時性発症した人工肛門部癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は81歳の男性,20年前に直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術,13年前に横行結腸早期癌に対して横行結腸部分切除術が施行された.2013年1月頃より人工肛門部からの出血がみられ肉芽腫性変化と診断され保存的加療が行われていたが,改善傾向がなく,当科紹介となった.人工肛門の粘膜皮膚接合部より2mm程度口側に長径17mm大の隆起性病変を認め,生検で高分化型腺癌を認めた.人工肛門部癌と診断し,人工肛門部を含めた結腸部分切除および人工肛門再造設術を施行した.自験例は最終の大腸癌手術から13年が経過しており,再発・播種・implantationは否定的であった.人工肛門造設後にも長期的かつ定期的観察が必要であり,また人工肛門周囲の肉芽や腫瘍性変化に対して生検を含めた積極的な診断が重要であると考えられた.