2015 年 68 巻 10 号 p. 883-889
家族性大腸腺腫症の大腸癌発生を予防する方法は,外科的大腸全摘術のみであった.その大腸切除を避ける,または手術時期を遅らせるために,薬を用いて大腸ポリープの増大を抑制する化学予防や,内視鏡的にポリープを摘除する治療が研究されている.
本稿では,家族性大腸腺腫症に対する大腸癌予防のための化学予防として非ステロイド系抗炎症剤のスリンダクやセレコキシブ,アスピリンなどを用いた臨床試験の成績を紹介するとともに,私たちが実施している大腸内視鏡による大腸ポリープ徹底的摘除の研究状況を紹介する.
化学予防薬や内視鏡的ポリープ切除は,まだ,家族性大腸腺腫症に対して臨床応用できるところには至っていないが,近い将来,一部の家族性大腸腺腫症に対しては,実用化できることが期待される.