2015 年 68 巻 10 号 p. 921-927
便失禁の診療は,患者の年齢や活動性,患者を取り巻く社会環境などが関係するため,その症状の原因となる病態を的確に把握して,個々の患者に適した保存的治療や外科的治療を選択して複合的に治療するという国際的な共通認識がある.すでに欧米では,これまでの診断や治療効果を集約し,便失禁の標準的な治療の選択基準が診療指針として提示されている.本邦においても,最近では症状の原因となる病態を評価して治療する考え方が徐々に普及してきた.しかし残念ながら,いまだ一般的には欧米のように系統立った診断に基づいて治療する状況までには至っていない.この社会的背景や医療環境を改善するためにも,共通の基礎概念のもとで診断や治療を行うための診療基準を構築することが急務となっている.そこで本邦における便失禁診療の標準化を目指して,国際的な共通認識を再確認して,その基準に準拠した診療指針の基盤を整備するために本特集を企画した.