2015 年 68 巻 3 号 p. 178-184
側方リンパ節転移陽性の進行直腸癌に対し術前化学療法が奏効し,肛門温存も図れた1例を報告する.症例は68歳女性.肛門出血を主訴に他院受診し,直腸癌の疑いで当科紹介された.直腸診・下部内視鏡検査で一部歯状線にかかる約1/3周性の可動性不良な腫瘍を認め,生検で直腸癌と診断された.精査で左閉鎖リンパ節腫脹を認め,RbP cT3 (cA) cN3 cM0 cStage IIIbと診断しAPRを検討したが,肛門温存と早期の全身化学療法導入による遠隔転移抑制を目的に,十分なICのもと術前化学療法(mFOLFOX6)を施行した.6クール施行後,腫瘍・リンパ節ともに著明な縮小を認め,肛門温存も可能と判断し,ISR(D3+側方リンパ節郭清),予防的回腸人工肛門造設術を行った.病理所見では原発巣,リンパ節に癌細胞を認めず,pathological CR,効果判定基準Grade3であった.