日本大腸肛門病学会雑誌
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原著
最近の大腸癌周術期管理の実際─第40回東京大腸セミナーアンケート調査結果─
渡辺 誠村上 雅彦青木 武士高橋 慶一安野 正道正木 忠彦板橋 道朗吉松 和彦斉田 芳久船橋 公彦菅 隼人大田 貢由
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2015 年 68 巻 6 号 p. 391-402

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抄録

【目的】大腸癌患者に対する術後の回復促進に向けたenhanced recovery after surgery (ERAS®)の概念が,どこまで認知されているのかを明らかにするために東京大腸セミナー参加55施設に対して郵送法にてアンケート調査を行った.【結果】回答率は56%(31/55施設).ERAS®の概念は94%の施設で認知されていた.ERAS®22項目中,8項目(術前情報提供,麻酔前投薬省略,血栓予防,皮膚切開前の抗菌剤投与,硬膜外麻酔,術中低体温予防,胃管留置の廃止,術後早期離床)が80%以上の施設で実施されていたが,6項目(機械的前処置省略,術前絶食廃止,炭水化物飲料水負荷,術中輸液制限,消化管蠕動亢進薬使用,早期経口摂取)は25%以下の実施率であった.局所的,全身的合併症の発生頻度は低く,80%以上の施設がともに10%未満と回答した.【結語】術後回復促進の概念は日本の待機的大腸手術において十分浸透していたが,ERAS®の回復促進策はわずか36%しか実施されていなかった.手術手技を含めた複数の因子が術後早期の良好な回復に寄与していると思われた.

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© 2015 日本大腸肛門病学会

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