日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
Print ISSN : 0047-1801
ISSN-L : 0047-1801
症例報告
複数の発癌機序を同時に示した6多発大腸癌の1例
森谷 行利高木 敏行冨岡 憲明森谷 弘乃介瀧上 隆夫森川 達也永坂 岳司藤原 俊義
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 68 巻 8 号 p. 544-551

詳細
抄録

症例は71歳,男性.肛門出血と腫瘤脱出にて来院となった.肛門から脱出した腫瘤を還納した後,注腸X線および大腸内視鏡検査を施行したところ,横行結腸・下行結腸・直腸S状部(RS)に進行癌,横行結腸・下行結腸・下部直腸(Rb)に早期癌を疑わせる病変を認めた.治療として,まずは直腸病変の組織診断と深達度を明らかにした上で全体的な治療方針を立てる目的で,肛門脱出した直腸癌を経肛門的に切除した.次に,右結腸曲から上部直腸(Ra)までを一括切除し上行結腸と下部直腸(Rb)を吻合した.病理組織学的に計6ヵ所の大腸癌病変を認めたが,遺伝子変異解析も併せて行ったところ,複数の発癌機序(adenoma-carcinoma sequence・de novo発癌・serrated pathway)が同時に併存していることが認められた.多発大腸癌の成り立ちや治療方針を考えていく上で非常に示唆にとむ症例と考えられた.

著者関連情報
© 2015 日本大腸肛門病学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top