2016 年 69 巻 1 号 p. 33-37
症例は68歳男性.主訴は水様性下痢.左下腹部に手拳大腫瘤を触知し,腹部に自発痛や圧痛はなかった.腹部造影CTでは下行結腸に径約10cmの全周性の壁肥厚を認め,小腸浸潤が疑われた.開腹すると腫瘍がTreitz靭帯から160cmの空腸と瘻孔形成していた.腹腔内に肝転移,腹膜播種や遠隔転移は認めなかった.空腸と大網合併切除を伴う結腸部分切除,D3郭清を施行した.病理組織学診断はD,2型,100×70mm,Circ,pT4b(jejunum),pN1a,muc>tub1.最終診断はpT4bpN1cH0cP0cM0,pStage IIIaであった.術後6週間後より補助化学療法を行っている.結腸癌による消化管との内瘻形成の報告はまれであるが,蠕動のある空腸との瘻孔形成はより少ない.本症例は空腸結腸瘻を形成していたが,合併切除を行うことにより根治切除が可能であった.