2016 年 69 巻 6 号 p. 321-325
症例は74歳男性.虫垂炎による腹膜炎で手術の既往有り.7年前,右下腹部痛を主訴に当院初診.腹部CT検査にて,上行結腸に多発憩室とその内部に脂肪の介在する層状構造が認められた.内視鏡検査で上行結腸に30mm大の隆起性病変が認められ,生検では正常粘膜の所見であった.その後憩室炎で2度の入院治療を要した他,度々右下腹痛を生じた.数回の内視鏡検査で隆起性病変の増加および結腸内腔の狭窄が認められたため手術を施行した.腹腔鏡下に開始したが,上行結腸と後腹膜とが強固な瘢痕性癒着を形成していたため開腹に移行し,結腸右半切除術を施行した.病理組織検査で上行結腸多発憩室およびlipohyperplasiaと診断された.自験例での比較的長期の観察ではlipohyperplasiaの増加と憩室炎とは関連性があると推測された.またlipohyperplasiaは回盲部がほとんどで大腸での発生は稀である.