2018 年 71 巻 8 号 p. 346-349
症例は37歳,女性.3年前より血便を認め,2ヵ所の病院で消化管精査を行ったが出血源不明であり,精査目的で当院消化器センターを紹介受診した.来院時Hb 6.0g/dlと高度貧血を認めたために輸血を行った.当院でも下部消化管内視鏡を施行したが,出血源を認めなかった.その後も血便が連日続き,外科に紹介となった.詳細に問診を行うと排便後肛門から直腸の脱出があることがわかり,怒責診で完全直腸脱を認めた.粘膜の鬱血で静脈性出血を認め,高度貧血もきたしていたため緊急性が高いと判断し,緊急で根治術を行った.腹腔鏡で観察するとダグラス窩に深いcul de sacを認め,直腸脱として矛盾はなかった.腹腔鏡下直腸固定術および腹腔鏡下骨盤底形成術を施行した.術後経過は良好で,再発を認めていない.今回,繰り返す血便により高度貧血をきたし,緊急手術を要した完全直腸脱の1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.