2020 年 73 巻 1 号 p. 8-12
症例は78歳,男性.以前より完全内臓逆位を指摘されていた.暗赤色便にて当院消化器内科受診し,下部消化管内視鏡検査を施行したところ,下行結腸脾弯曲部に2型腫瘍を認めた.生検にて,Group5,腺癌と診断され,手術目的に当科紹介受診となった.3D-CT画像で,逆位以外の血管走行に異常を認めないことを確認し,腹腔鏡下結腸部分切除術を施行した.術者は患者の左側に立ち,ポートの位置も180度回転し配置した.術前シミュレーションを十分に行ったので鏡面構造を意識しながらも,左右鏡面像の違和感を軽減し,解剖の同定を誤ることなく安全に手術を施行できた.術後経過良好で,術後12日目に退院した.完全内臓逆位を伴う腹腔鏡下結腸切除術を安全に遂行するには,3D-CT検査を活用した解剖学的評価と徹底的な術前シミュレーションを行い,術中には解剖学的位置関係を正確に同定しながら慎重に手術をすすめることが肝要と考えられた.