2020 年 73 巻 10 号 p. 452-457
本邦の大腸NETは後腸系に属する直腸原発が90%以上を占め,Chromogranin Aの陽性率が低いなど,中腸系NETとは異なる免疫組織化学的特徴がある.2019年に発刊された消化器WHO分類にてNET亜分類の変更が行われ,旧版の増殖指数によるものから,細胞異型度や組織分化度などの組織学的所見と増殖指数を組み合わせたものへ変更された.これにより,増殖指数の高いNETと,ゲノム異常や薬物治療反応性の異なる高悪性度の神経内分泌癌とが明確に区別された.本邦の大腸癌取扱い規約では,以前から両者を明確に区別する立場をとっており,新WHO分類は本邦の立場に近くなった.近年では,増殖指数以外のバイオマーカーの報告も散見され,多因子の解析による,適切な治療戦略の確率が期待される.虫垂杯細胞カルチノイドは,新WHO分類では虫垂杯細胞腺癌に名称変更され,NETとは別の腫瘍であることが明確になった.